2012/05/30

スウェーデンのコミュニケーション専門学校Berghsの卒業制作展からインスピレーションを得る。



国内のみならず世界的にも評価の高いスウェーデンのコミュニケーション専門学校、Berghs School of Communicationの校舎で、先日卒業制作展「GREAT MINDS DON'T THINK ALIKE」がありました。一般公開日があったので覗いてみたのですが、その卒業制作のスタイルが興味深かったのでご紹介したいと思います。



まずBerghsには様々なコースが揃っています(これらは全て1〜2年のフルタイムコースですが、その他にオンラインコースなどもあります):


この中でGraphic Designコースだけ特殊で、制作者自身がテーマを決めて卒業制作に取り組む形になっていました。その他のコースの生徒については、19のプロジェクトチームに分けられ、実在する企業の課題に対する解決策を提案することが、彼らの卒業制作でした。

そこで興味深かったのは、この実在する企業が実際に生徒たちをスポンサーしている、ということ。MicrosoftやLufthansa、Diners Clubなどのグローバル企業からローカルの不動産屋や歯科医院まで様々な組織が揃っており、事前に生徒に対して課題説明のプレゼンを行っていたようです。

そんな各企業の課題を解決するためには、誰に向けて、どのメディアをどう組み合わせ、どんな表現でどのように発信して広めるのがベストか?ということを映像やウェブサイト、モバイルデバイスやポスターなど様々なツールを活用して卒業制作展にて紹介していました。

それぞれのチームには、アートディレクターやコピーライター、デジタル・ストラテジスト、プランナー、アカウント・マネージャーなどの各専門分野を学んできた生徒が集められており、まさに広告エージェンシーとしてクライアントの課題に取り組む、といったイメージですね。

なんと中には、クライアントが学生の解決策を非常に気に入ったため、実現させる方向でそのクライアントの(リアルな)広告エージェンシーと詳細検討中、という作品もありました。学校という枠を軽く越えてるところが、スゴイですよね。

ここからは、個人的に面白いなぁと思った卒業制作を二つご紹介します。



クライアント①:Diners Club


【現状】
Diners Clubは世界初のクレジットカードブランドだが、北欧ではほとんど知られていない

【課題】
ブランドの認知拡大を通じて新規入会者及び加盟店の増加を目指したい!

【インサイト】
人生における最高の瞬間というのは、
ネット上ではなく「リアルライフ」でしか体験できないもの

Diners Clubはオンライン決済には適しておらず、技術開発にも特に力を入れていないが、1950年に利用が開始されて以来、食事・ショッピング・旅行など「リアルライフ」を充実させるために人々に活用されてきた。そんなDiners Clubの歴史から導き出されたキャンペーンがコチラ:

【解決策】
Facebookアプリ「The Timeout」を開発する。利用者はこのアプリを通じて、友人にインターネット利用から休憩(time out)を取ってもらうことを目的にレストランへ誘うことが可能。選べるレストランは3箇所で、それぞれオファー(割引など)が異なる。週替わりでレストランが変わっていく仕組み。(ちなみに招待状はハガキとして相手に届けられる)

②食事中は、あなたがtime outを取っているということをアプリが自動的にfacebook上の友人らに知らせてくれる。

③携帯をスタッフに預けることで、邪魔の入らない食事の時間をゆっくり過ごすことができる。



ブランドの個性がちゃんと活きていて、且つ生活者のインサイトを上手く捉えた、とても共感しやすいアイディアだなぁと思いました。O2O (Online to Offline)の導線が良く出来ていますよね。私は特に、携帯をスタッフに預ける、という部分が好きです。相手がトイレに行っている間、どうやって時間潰せばいいんだろう?と悩んでしまうかもしれませんが。

こちらの紹介映像もなかなか良くできています:




Diners Clubのチームメンバー:
(Berghsの生徒は基本的に全員ホームページを持っているようです)




クライアント②:Distriktstandvården

※ストックホルム郊外の歯科医院11施設を取りまとめている組織


【現状】
定期的に歯医者に通う人が少ない(本当に必要でない限り、多くの人は歯医者に通おうとは思わない)

【課題】
より多くの市民に定期的に歯科医院を訪れてもらうにはどうしたら良いか?

【解決策】
Distrisktandvårdenが各地域コミュニティと手を組み、地元活性化企画「The Local Smile」を展開する。市民が毎回歯科医院に行く度に、The Local Smileに対して10クローナ(約120円)が寄付される。また、複数用意されている地元活性化プロジェクトの中から実現させたいものに一票を入れるという仕組み(自ら新しいプロジェクトを提案しても良い)。票数の一番多いプロジェクトに対して寄付金が投じられる。

この企画を通して、Distrisktandvårdenは単なるローカルな歯科医院組織ではなく、よりハッピーな地域社会を築くためのハブ組織にもなりうる。


残念ながら、なぜか紹介映像は限定公開になっていました。
正直なところ、地元活性化プロジェクトの実現のために歯医者に通うようになるかは、微妙なところですが…それでも、「地域社会の発展を応援しています」という姿勢をDistriktstandvårdenが見せることはとても意義のあることだと思います。実際に実施する場合は、市民の興味を維持するために、各プロジェクトへの寄付額をリアルタイムでウェブやソーシャルメディアに表示すると面白いですよね。且つ、学校と協力すれば、子供たちは歯医者をもっと意識するようになるだろうし、地元への関心も高まるかもしれませんね!

Distrisktandvårdenのチームメンバー:



その他のプロジェクトの詳細を知りたい方はコチラからどうぞ。グラフィックデザインコースの卒業制作は、コチラから。